自然豊かな地方都市にあるBホテルは、温浴施設やコテージを併設し、アクティビティを満喫できる宿泊施設です。ターゲットをファミリーや研修・合宿利用に絞って差別化を図り、かつスタッフのモチベーションも高いポテンシャルのあるホテルですが、ここ数年、老朽化による集客減と高い人件費率が経営を圧迫し、利益を創出できていないというご相談がありました。
ホテル幹部への数回にわたるインタビュー、実際に現地を訪れ施設を視察、加えて開示資料を分析し、ホスピタリティディレクションズとして下記のような経費コントロールと売上向上施策を提案しました。
■人件費コントロール
一連の調査・分析により、一番の問題点は人員配置にあると思料しました。そこで、適正な人員配置を把握するためのツール FTE(Full Time Equivalent=フルタイム当量)の導入をご提案しました。FTEは、ホテルの各部門が、正社員として換算して何人分に当たるかを示すツールです。繁閑の差があるホテルは、契約社員やアルバイトの比率が高くなり、適正な人件費の把握が困難になりがちです。そこで、部門ごとの総労働時間から正社員に換算した場合の人数を割り出し、実際の人数が適正を超えていた場合は業務内容やシフト体制を見直すことで、最終的には人件費率30%を目指して調整していくというものです。導入に際しては、各部門に必要な正社員の人数を提示するとともに、体制の見直し方法もサポートします。
■フードコストコントロール
ホテル食材の適正原価率は一般的に30%を目標としています。Bホテルのフードコストは40%と高く、率を下げる必要があると考えました。改善案として、原価管理シートの導入をおすすめしました。料飲部門に携わるスタッフ全員が、日々原価を算出したシートを共有することで、食材価格に対する意識を高め、適正原価率へ近づけていきます。原価率の把握は、提供価格の見直しにも役立ちます。
■施設改修
老朽化のため全体的に改修が必要であるほか、顧客ニーズと合わない施設が販売機会を損失していると判断しました。建物状況調査による現状把握を行い、ホテルの目指す方向性に沿った、長期的な視点での改修計画の策定・実施が肝要であると提案しました。
■ウェブサイトの見直し
自社ウェブサイトの集客力を上げ、直接予約を増やすことは、売上増加だけでなく、予約手数料の軽減にもつながります。ホテル業界においてもスマートフォンによる閲覧・予約率が格段に高まっていることから、Bホテルのウェブサイトを確認し、モバイル対応のデザインに改修する必要性や、予約率を高める動線の確保などの施策を提示しました。
■マネジメントツールの導入
運営判断に必要なレポートが少なく、財務状況に対する全スタッフの認識がやや低いと思料しました。そこで、Daily Reportで日々の売上、費用、GOP(営業総利益)を把握して数字に対する意識を高めることと、3か月予測レポートを導入し、稼働・単価の低い時期に早めの施策を講じて着実にGOPを確保することをおすすめしました。
Comment from Hospitality Directions
ボラティリティの大きいホテル運営だからこそ、体制の見直しや適正な経費コントロールによって利益を回復することが可能です。忘れてはならないのは、経費削減のみを実行すると施設に魅力がなくなり、スタッフのモチベーションも下がるという点です。必要な投資は行い、売上向上を図りながら経費をコントロールする、この両輪が欠かせないと考えます。